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November 10, 2025

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ダイバーシティー推進委員会:コラム Vol.1

ダイバーシティは、特別なテーマではなく、私たちの働く日常の中にあるもの——。
日本コンベンション協会ダイバーシティ推進委員会のこのコラムでは、現場で見つけた小さな気づきや、会員のみなさまの声を通して、多様性についてともに考えていきます。

Vol.1はDMC沖縄の平田実さんです。

 

沖縄県民は着ない?観光客が愛するオリオンビールTシャツ

国際通りや那覇空港を歩いていると、必ず目に入ってくるのが「オリオンビールTシャツ」。観光客の皆さんが着ている姿をよく見かけます。オリオンビールのロゴは、それだけで「沖縄に来た!」という証拠のように映るのでしょう。

ところが、沖縄県民はこのTシャツをほとんど着ません。正直に言えば、地元の人間からすると「観光っぽすぎる」「ちょっと照れくさい」と感じるのです。私自身も着たことはありません。おそらく多くの県民にとっては、オリオンビールTシャツは“自分で着るもの”ではなく、“観光客が楽しんでくれるアイテム”という感覚。

同じTシャツなのに、観光客にとっては「旅の誇らしい証」であり、沖縄県民にとっては「日常では選ばない服」。まったく逆の価値を持っているのが面白いところです。この“受け止め方の違い”こそが、実はダイバーシティの一例だと感じます。

2025年9月、オリオンビールが東証プライムに上場しました。沖縄ローカルのビールとして親しまれてきた存在が、全国、そして世界に向けて羽ばたく節目を迎えたのです。沖縄県民にとっては「昔からある当たり前のビール」ですが、観光客や県外の人にとっては「特別なごちそう」。上場というニュースは、まさにその二面性を象徴しているように思えます。

考えてみれば、オリオンビールはずっと“違いをつなぐ存在”でした。模合(沖縄の飲み会)や各家庭では「とりあえずオリオンビール!」が合言葉。自然に同じテーブルを囲める不思議な力があります。そして、観光客にとっては「沖縄に来たらまず一杯」の定番。沖縄県民と観光客の立場が違っても、乾杯の瞬間には同じグラスを掲げて笑顔になる。まさにダイバーシティが自然に体現されている光景です。

 

ダイバーシティというと、難しい概念のように聞こえるかもしれません

要するに、「違いを認めて、そのまま楽しむ」ということ。オリオンTシャツを着ない県民も、喜んで着る観光客も、どちらも正しい。大事なのは、その違いを「おかしい」ではなく「面白い」と受け止められるかどうかです。

私たちが関わるMICEの現場でも、同じことが言えます。参加者の国籍、文化、価値観は多種多様です。誰かにとっての“当たり前”は、別の誰かにとっては新鮮で特別。その違いを尊重し合うことで、MICEはより豊かになっていきます。

オリオンビールとそのTシャツは、沖縄の人と外から来る人の“価値観の違い”を映す象徴です。ローカルの普通が、外の人にとっては特別になる。逆に、外の視点があるからこそ、自分たちの文化や日常に新しい価値を見いだすことができる。

次に街でオリオンTシャツを着た観光客を見かけたら、「あ、沖縄を楽しんでくれているんだな」と微笑ましく思うことにしています。違いを笑顔に変えるこの感覚を、MICEの現場でも忘れずに持ち続けたいと思います。

 

JCMAダイバーシティ委員会 株式会社DMC沖縄 平田 実